投稿日:2016.11.17 |
住宅用24時間換気の種類とわかりづらいメリットデメリットをおさえた選び方
オオサワ創研の「住まいのコラム」をご覧いただき、ありがとうございます。
本日も、みなさまが知って得する住まいの情報をお届けいたします。
さて今回のテーマは前回に引き続き「24時間換気」について。
前回のコラムで、24時間換気の必要性と寒さ対策についてお伝えしました。2003年のシックハウス法施行から、身体に有害な物質が住宅の中で蔓延しないよう24時間換気が義務付けられ、1時間あたり住宅内の空気1/2を外気と入れ替えるように現在の住宅はなされています。そのため、寒いからと言って24時間換気をむやみに止めてしまうと、身体に悪影響を及ぼしてしまうから気をつけましょう。という内容でした。
▼前回のコラム
「24時間換気が寒い!止めてもいいですか?」
シックハウス法が施行されてからは、1時間あたりで住宅の1/2の空気を換気しなければいけないため、住宅の大きさによって換気能力を高めたり、数を増やしていかなければいけません。本日はこれから24時間換気システムを導入しようと考えている方がより理解を深められるよう、そのメリット・デメリットで選ばれる換気方法と、その種類についてお伝えしたいと思います。
▼シックハウスについての記事はこちら
「シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因が増えている今健康に生きるために必要なこと」
「シックハウス症候群や化学物質過敏症の対処方法を考える」
そこで本日のコラムは
「換気方法はどんな種類があるの?」
「よく利用されている機械換気はどんな種類があるの?」
「うちはどの24時間換気システムを選べばいいの?」
でお送りしたいと思います。
■ 換気方法はどんな種類があるの?
まず前提として、この24時間換気システムは、ニオイや煙などを輩出することを目的とした台所の換気扇とは別物であり、あくまで住宅の中の空気を対流させたり換気させることを目的としているものです。
家の換気方法には、大きく分けて
- 自然換気
- パッシブ換気
- 機械換気
の3種類があります。
それぞれの特徴など見てみましょう。
自然換気
自然換気は、もっとも一般的な換気方法であり、ドアや窓を開けて自然の空気の流れを利用して換気する方法です。昔は建物にすき間が多くあったことや、窓やドアを開けて空気を入れ替えることを頻繁に行っていたため、この方法でもそこそこまかなえていたのですが、最近の建物は高気密な建物が多くなってきたこと、文化の変化、都市部を中心にセキュリティ観点からドアや窓を開けて換気することが一般的ではなくなってきたために十分とは言えない方法となってきています。
もちろん、昔は自然換気をすることで空気の入れ替えと温度の変化を期待していたのですが、空調の普及などから自然換気をすることで逆に快適な室内温度環境が期待できないことも、敬遠されている大きな理由の一つと言えるでしょう。
パッシブ換気
パッシブ換気は自然の力をより活かすために設計された住宅を利用することで、建物全体で換気する方法です。外気との気圧差や温度差、風圧などの自然の力で換気させます。窓を開けることで換気させる方法や、床下から冷たい外気を取り入れ、室内に循環させ、屋根から排出する方法など様々な方法があります。換気扇などエネルギーを必要としない換気方法ではありますが、その場の環境により効果度合いは変わってくるため、すべての住宅に十分な効果を期待できるものではない点には注意が必要です。
機械換気
機械換気は現在一番採用されている換気方法です。自然換気などのように自然の力で換気するのではなく、機械を利用して計画的に室内を換気させます。前述のようにシックハウス法が施行されてからは、計画的換気が義務となっていることや、住宅の気密性が高まっていることから、この換気方法が多く採用されています。
24時間換気システムと呼ばれているのは、この手法のことを指します。そしてこの機械換気の中にもさらに換気方法の種類があり、それぞれにメリットデメリットが存在します。
現在一番多く採用されている機械換気システムの種類について、お伝えしていきたいと思います。
よく利用されている機械換気はどんな種類があるの?
日本の住宅でよく採用されている機械換気には、大きく分けて下記のような種類があります。
換気方式 |
|
熱交換方式 |
|
施工方式 |
|
その中でも換気性能を大きく分ける、換気方式の種類について見ていきたいと思います。
第一種換気 | ファンで給気 → ファンで排気 | 外気圧とほぼ一定 | 高価 |
第二種換気 | ファンで給気 → 自然に排気 | 正圧状態 | 中間 |
第三種換気 | 自然に給気 → ファンで排気 | 負圧状態 | 安価 |
第一種換気
吸気、排気ともに機械を利用し、吸気口をダクトで各部屋にひっぱってそこから廊下など各部屋に設けた排気口に空気が流れ込んでいく方式。高断熱高気密住宅などでよく用いられている方式です。
また各部屋に吸気口と排気口を設けることで換気をさらにコントロールする、「第一種換気-2」という上記方式をさらに発展させた種類もあります。
この換気方法のメリットは、第一種換気機器の中で「熱交換式換気扇」を利用することで、室内の温かい空気を排気して、室外から給気する冷たい空気をなるべく室内の温度に近づけて取り込むことができる点です。またこの方法は省エネを考える際に忘れてはいけない湿度に関しても、効率が良いのです。
ただデメリットとしては、第一種換気はコストがかかること、そしてダクト内に蓄積されるほこりの清掃や、第一種換気用のフィルター交換にも高めのコストがかかる点です。
ここは費用対効果や予算、そしてメンテナンスをきちんと行えるのかということを考えておく必要があるでしょう。
第二種換気
第二種換気は、外気をファンで給気して自然に排気する方式です。
この第二種換気のメリットとしては、第一種換気と第三種換気のいいとこどりであること、そして常に正圧状態にすることができる点でしょう。
機械吸気をすることで室内側に外気を強制的に取り込み、室内から常に空気を室外へ押し出す状態となります。この状態を「正圧状態」と呼び、住宅にある空気がいつも潤沢な状態となるのです。いつも外気を取り入れ室内が空気でパンパンだから、外に空気が押し出されるということですね。
ただ室内の温湿度環境が室外の影響をダイレクトに受けてしまうために、夏のジメジメした蒸し暑い空気や、冬の冷たく乾燥した空気をそのまま室内に取り込むので、この換気方法を採用している住宅はほぼなく、主にクリーンルームなどに採用されている換気方式現状です。
第三種換気
第三種換気は最も安価であり、一般的な換気方法です。
建物のどこかに自然吸気口を設け、建物の1~2カ所に換気扇を設けて排気する方法で、第2種換気と真逆の方法をとっています。この第三種換気は、24時間換気が義務付けられた現在もっとも採用されている換気方式です。
第三種換気の中には、排気ファンを廊下などに設けてダクトで外部に排気させる「第三種換気-2」や、給気は各部屋から自然吸気で取り入れて、排気はそれぞれの部屋に設けて給気と排気の流れを各部屋ごとに計画する「第三種換気-3」という方式もあります。
そして第二種と真逆の方式をとっているため、室内が「負圧状態」となります。常に外に空気が排出されるので、外の空気が足りなくなった室内に入り込んでくるということですね。この負圧状態が続くと、玄関を開けるのが大変になることがあります。
この第三種換気のメリットは、他の換気方法と比べて安価であること。そしてデメリットは室内の空気を強制的に室外に排出するため、外気温の影響を受けやすくなり、室内が寒くなりやすいことでしょう。
換気システムには、多くの種類があることが理解いただけたのではないかと思います。では、この数多くある換気システムの中でどれを採用すればいいのでしょうか。
うちはどの24時間換気システムを選べばいいの?
この記事を読んだ方の誰もが思う疑問だと思います。
どの換気システムも一長一短ありますので、一概にどちらがいいとは言えないのですが、それぞれのご家族のニーズに合わせて、オーダー先とそれぞれのメリット・デメリットを話し合いながら決めていくと良いと思います。
ただなんでもそうですが、何か物を購入する場合には「初期投資(イニシャルコスト)」と「運用費(ランニングコスト)」のこと、どちらのことも考慮して決めないと「そんなはずじゃなかった!」という事態になりかねません。
その観点を踏まえて、それぞれの想いに合わせた目安を考えていきたいと思います。
お金に余裕がある人
第一種換気でしょう。
第一種換気は初期投資も高額で、なおかつランニングコストもホコリの清掃、フィルターの交換など定期的にメンテナンスが必要ではありますが、性能と熱損失の少なさは大きな魅力です。
ただ、家の気密性能などによっては第一種換気と第三種換気のQ値(熱損失係数)があまり変わらない場合もありますので、必ず計算してもらって決めましょう。
コストを抑えたい人
言わずもがな、間違いなく第三種換気ですね。
メンテナンスが面倒くさい、多額のメンテナンス費用をかけたくない人
第三種換気方式です。
多くの第一種換気方式は、天井裏などにいくつものダクトを通す必要があり、これの掃除をしなければいけないこと、そして機会を多く使うのでその故障リスクなどがデメリットであると言われています。また熱交換エレメントは条件が悪い場合は、カビが発生することがあるので、カビ菌や虫の市街がベッタリとついているフィルターを通った空気が家中に拡がっている、なんてこともあるので定期的なメンテナンスは重要です。
ひゃー!
書いてて自分でもいやになります。
家があまり気密性が高くない
第一種換気をおすすめします。
第三種換気は家の空気を排出させる仕組みのため、気密性が高くなければ期待効果が低くなるためです。導入を決める前に必ずQ値(熱損失係数)の計測をしてもらいましょう。
住まいが大きな道路に面していたり、空気汚染がひどい環境である
第一種換気の方が安心でしょう。
アレルギー体質である
そのアレルギーの種類によっては、第一種換気の方が安心でしょう。
空気洗浄を重視したい
うーん・・・
正直なところ、ここは難しい点だと思います。
その理由は上記2つのポイントで「第一種換気のほうが」とは書いたものの、空気清浄機を購入するという代替案もあるからです。そのため「安心でしょう」という言い方になるのですが、空気清浄機であれば壊れたり性能が良くなれば買い替えをある程度気軽にできるのですが、24時間換気システムはそうはいきません。ほとんどの場合が24時間換気システムを導入したまま何十年も同じものを使用し続けることとなるでしょう。何十年後にどれほど技術が発達しているのかは未知数です。そんなことを言ったら、なにも買えなくなってしまいますが。
理想は第一種換気を導入して、こまめにメンテナンスをしながら、併せて良い空気清浄機を購入するという感じでしょうか。ここは個々の考えによる部分かなと思います。
まとめ
いかがでしょうか。
これから24時間換気システムを導入しようかなと思っている方の一助となればうれしいです。
24時間換気システムは決して目立つ部分ではないですし、わかりにくい設備なので決めにくいものであると思います。そして最近は空気がきれいすぎたり、殺菌しすぎて子供の免疫力が下がり、アレルギーが多くなっていると言われています。
そのため、体内に多く取り入れるものとして重視しなければいけない部分でもあり、日々の生活や免疫力低下に影響があるため気にしすぎるのも良くない部分でもあり・・・難しいところではあります。
それぞれの換気方式のメリット・デメリットをよく理解し、オーダー先の言いなりでただ決めるのではなく、それぞれのご家庭にマッチした換気方式を選びましょう!